| 国会通信 by 谷本たつや 2001.5.24(第8号)
「改革断行」への「宣戦布告」
法務省と厚生労働省の官僚は心の底から驚いたに違いない。今まで自分たちが
描いたシナリオがこんなにあっさりと政治家によって覆されたことなどないからだ。
5月23日午後、小泉純一郎総理は熊本地裁において国側が敗訴した「ハンセン病
訴訟」について、「控訴断念」を決断し発表した。
私はこの決断には、「民の立場に立った超法規的な勇気ある決断」という側面とは
別に、もう一つの重大なメッセージが込められているのではないかと考えている。
それは、「聖域なき改革を本当に断行するぞ」という「官僚」に対する「宣戦布告」
である。小泉新政権が誕生し、異常なまでに高い支持率が続いている。
しかし、それを見ながらまだ官僚は「俺たちがコントロールしていける」という思いを
心の中に持っていたに違いない。「俺たちがうまくやっていけば、改革も表面だけうまく
お化粧をして、自分達の既得権益は守っていけるだろう。」
しかし今回の小泉総理の決断はそんな官僚たちの思惑を吹き飛ばしてしまった。
「聖域なき改革」の最も大きな抵抗勢力は、守旧派の国会議員たちではなく、
自分達の縄張りを荒らされることを嫌う官僚機構である。いくら総理が「改革」を
大声で叫んでも、官僚の頭脳と団結をもってすれば、改革を阻止する理由付けは
いくらでもできる・・・はずであった。それがこの「控訴断念」の決断により、自分達の
今までのやり方が通用しないということを思い知らされたのだ。
この行為に対して「人気取りだ」などという批判を言っている官僚がいるらしいが、
行政という自分たちの立場を忘れた思い上がった発言と言わざるを得ない。
「決断」「判断」というのは、国民の審判を経て選ばれた政治家の仕事であり、そこで
決まったことに従いどう効率的にそれを実現していくかが行政の仕事である。
「私の改革に立ちはだかる勢力はすべて抵抗勢力だ。」
本会議の代表質問に答えた総理のこの言葉は、実は政治家だけに向けられたもの
ではなかったのかもしれない。政治家、官僚、そして国民自身に対してのメッセー
ジであるように私には思えてならない。
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