| 国会通信 by 谷本たつや 2006.5.30(第42号)
正確な情報で判断を・・・共謀罪
○ 共謀罪の経緯
現在、衆議院の法務委員会で「共謀罪」の審議が難航している。正確には、
「組織的な犯罪の共謀罪の新設」というものであるが、この法案についての
様々な議論や報道を見ていると、誤解に基づいているのか、故意に流して
いるのか判断しかねるような「間違った情報」が多く見られる。
そもそも、この法案が提出された背景は、2000年11月に国連総会で採択
された「国際組織犯罪防止条約」にさかのぼる。近年、急速に複雑化、深刻
化している国際的な組織犯罪に対処するために、各国が国内法を整備しよう
という趣旨のもので、その条約の中に、「組織的な犯罪に対する共謀罪」を
整備することが明記されている。日本は、2003年5月に国会でこの条約を
承認した。承認した以上は、国内法を整備し、条約締結へと進むのが普通
の筋道である。
○ 民主党、共産党は条約承認に賛成した。
しかし、現在、「国内法の整備」の段階で野党の反対により審議が行き詰ま
っている。賛成、反対はそれぞれの党の自由であるが、ここで指摘しておき
たいのは、2003年の条約承認の国会審議では、民主党と共産党はこの
条約に賛成しているという事実である。条約に賛成すれば、当然国内法の
整備に同意したことと同じである。そして今回の法案は、まったく条約に添っ
たものである。また、「条約には賛成だが、法案の内容が問題だ」という声も
あるので付言しておくと、民主党が示している修正案は、
@共謀罪の対象を「法定刑五年超」の犯罪に限定、
A共謀罪を国際犯罪に限定、というものであるが、本条約では明確に「法定
刑4年以上の犯罪」、「国際犯罪への限定は禁止」と記されており、
客観的に見て修正案は明らかな条約違反である。条約に賛成して、今回の
法案に反対するのであれば、もう少し整合性のある説明が必要ではないだろ
うか。
○ 報道の中の誤解
また、報道の中にも誤解に基づくと思われる表現が散見される。
例えば、「酒の席で上司の悪口を言って、『殺してやろう』と言っただけで逮
捕される。」「友人と自転車を盗む話をしただけで犯罪になる。」「脱税の相談
をしただけで捕まる。」といった類の話である。
これらはすべて「共謀罪」とは関係がない。「共謀罪」の対象は、「組織的な
犯罪集団(共同の目的が重大な犯罪を実行することにある集団)」に限定さ
れており、個人が同僚や友人と犯罪実行を合意しても「共謀罪」は成立しな
い。また与党修正案では、犯罪の合意だけではなく、一定の準備行為(現場
の下見、凶器の入手など)が要件として明記され、客観的な準備の証拠がな
ければ処罰されないものになっている。
○ 正確な情報による判断
「国際組織犯罪防止条約」については、現時点で120カ国が国内法の整備
を終えて締結している。先進8カ国(G8)で見れば、英・米・仏・加・露の5カ国
が既に締結し、独・伊も国内手続きを終了している。もちろん、だからと言って
無条件で通せというのではなく、正確な情報により国民の懸念を解消し、何が
国民にとって最良であるか、事実に基づいた議論をすべきだと考えている。
和歌山新報2006年5月30日 「がんばってます」 掲載
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