| 国会通信 by 谷本たつや 2003.12.18(第19号)
自衛隊は安全な所だけ?外交官は危険でもいい?
イラクにおいて、日本人外交官が殺害された事件は、非常に残念で痛まし
いことである。治安が極めて悪化している中で、外交官としての職務に全力
で取り組まれた姿勢に深い敬意を表するとともに、そういう活動を標的にした
「テロ行為」に対して、言い表し難い憤りを感じている。
奥克彦大使は、イラクに赴任する直前、森前総理に会い、次のように述べら
れたそうである。「今、ヨーロッパにいる外交官の中で、イラクに行けるのは自
分だけだと思う。現場を知る者としては、国連任せでは無理だと考えている。
やる気のある国が中心になって取り組むことが大事だ。」 また、外務省や友人
に宛てたメールの中でこうも言っている。「イラクの子供たちの瞳を見ていると、
少しでも何とかしてあげたいという気持ちが強くなる。そして彼らが成長した時
に、日本という国に感謝の気持ちを持ってもらえれば。」
奥大使と親交があったイギリス在住の評論家マークス寿子さんは、新聞紙上
で次のように述べられた。「自衛隊派遣で危険かどうかが議論されているが、
それでは、訓練を受けた自衛隊員も派遣できない所に外交官を平気で送って
いることになる。外交官は死亡しても自衛隊員はけがすらしてもいけない
というのはおかしい。外交官を派遣する時点で自衛隊の護衛をつけるのが
筋だった。」
外交官は危険な所にも出すが、自衛隊は安全な所にしか出せないという議論
は、よく考えてみれば非常に奇妙な議論である。自衛隊は本来、危険な任務
を行なうために、巨額の税金を費やして装備を整え、訓練をしているのである。
「自衛隊は安全な所だけ」という本末転倒な考え方が出てくるのは、日本が
「自衛隊」そのものの位置付けをごまかし続けてきたことのつけである。
「自衛隊は軍隊である。その主任務は、@自衛のための戦争、A大規模災
害時の救助活動、B国際貢献の3つである。」このように明確に決めていれ
ば、自衛隊を出すか出さないかという議論はあったとしても、「安全かどうか」
などという議論は出なかったはずである。
世界中には、紛争が絶えず、治安が悪く、人道復興支援を必要としている国が
たくさんある。そしてその支援を前へ進めていくためには、軍隊による治安の維
持と文民による復興支援は車の両輪である。どちらが欠けてもその活動は成
功しない。
日本が国際社会において発言力を失い、エネルギー問題や貿易問題についても
不利な扱いを受け、国際紛争が起こっても他国に助けを求めず、経済も今以上に
縮小することを覚悟してでも、国際貢献には参加しないという決断をするので
あれば、それも一つの道である。しかし、今まで通り石油を消費し、今まで通り
の生活水準を維持し、国防体制の一部を他国に依存し、経済の建て直しにも取り
組むというのであれば、国際貢献は、危険が伴う任務であっても避けては通
れない。いいとこ取りはできないのである。
日本は、長年ごまかし続けてきた「自衛隊」の位置付けを、明確に決め直さなけれ
ばならない時期に来ている。 (平成15年12月15日 和歌山新報掲載済み)
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